俺は理絵の顔を見つめながら、ゆっくりと距離を縮めていった。
さっきまで楽しそうに話していた理絵も、今は何も言わず、俺の顔を見つめている。
俺の歌にうっとりしていたのか──。
理絵は、そっと瞳を閉じた。
(……)
その仕草を見た瞬間、俺の胸はさらに高鳴った。
もう後戻りはできない。
俺はゆっくりと顔を近付けた。
そして──。
唇が重なり合った……。
ほんの一瞬のはずなのに、時間が止まったように感じた。
最初は少し緊張していた理絵だったが、呼応するかのように、すっと体の力が抜けていくのが分かった。
理絵は、俺を拒むことはなかった。
その温もりを感じながら、俺はもう一度、そっと唇を重ねた。
カラオケの部屋には、次の曲のイントロだけが静かに流れていた。
俺と理絵は、しばらく何も言わなかった。
ただ、お互いの顔を見つめていた。
この瞬間、俺は確信した。
理絵との距離は、もう海で出会った時とは違う──。
▶ 第21話へ続く…

コメント